当方映画を見る習慣・趣味はなく、よほどのことがない限り2~3年に1回だ。
ところが今年,2回も見てしまった。
1回目は3月8日、新エバンゲリアン劇場版。
エンディングに宇多田ヒカルの歌を流しながら関係者のリストを出すが、小生、ほんの少しお手伝いをし、小さく駄名が出ているので。
2回目が先日見たドライブ・マイ・カー。
たまたまある日の午前空き時間が出たので、午前9時からの千葉県立公文書館見学と10時からのこの映画鑑賞を組み入れた。
この映画を入れたのは原作が村上春樹であること、カンヌ国際映画祭脚本賞受賞が大きく報道されたこと、上映するミニシアター(千葉劇場)が菅原の孝標一行が歩いた古代東海道ルートではないかと(私が)想定する千葉市内吾妻橋通りにあったから。
監督も出演する俳優も100%知らない人ばかり、そんな私であるが雑感を述べたい。
1 村上春樹について
毎年のようにノーベル文学賞騒ぎに登場し、今や、彼はだめだ、文学性がいまいちと否定する傾向が強くなっている。
が、最近の芥川賞受賞者で氏の作品を崇める人もいるし、短編について評価する人も多いし無下に否定するのもいかがなものかと思い始めている。
当方この作品は読んでいないが、「猫を捨てる」は読んでいて題名からしても時代傾向に迎合していなくて好感を持った。
たまたまであるが今年9月23日市原市で更級日記千年紀の講演会があり、講演者としてロバートキャンベルさんが出たが氏のはじめの話は村上春樹のことだった。
こういうことも鑑賞誘因となってくる。
濱口監督は「この作品にほれ込み映画化を熱望」したそうだ。
2全体の感想
10時開演だから1時間半程度長くて2時間かなと予想していた。が、出だしは丁寧というか進展はゆっくりであったが、週末部に近づくにつれて、ぐいぐい見るものを引き付ける展開で終わってみればなんと3時間!終了13時
全く長さを感じさせないものであった。あとで他者の感想を聞くと異口同音に長時間を感じさせないと言っている。それほどの出来ということだ。
3 キャスティング
出演者について雑感を
主演 西島秀俊:
一生懸命演じているがいかにも演劇愛好家が演劇を演じているという感じ。力みが感じられては嘘っぽくなってしまう。緒形拳のように力を抜いてリアル感を出せる人を。
濱口さんはこの作品で背が高い容貌度の高い男優を選んでいるが、選択基準なのですかね。
岡田将生:
背が高い容貌度の高い人であるが、女に手が早く感情を抑えられないという役にはあっている。資産家の息子で大学でミスター○○、女子大生に性的乱暴をという役があったとしたら最適(この映画にはない)。
危なっかしさを出せているのは演技力があるということだろう。
映画祭事務局の中年男女:
女性:美から遠いが力が抜け、本物の事務局職員という感じがする。印象に残る。監督は女性を見る目がおあり。
韓国人男性:善意の塊という感じを出しているいい俳優だと思う:
三浦透子:
主演と言っても差し支えない役。
東南アジア人かという顔立ち。普通ならアップしない。中学生の時から水商売の母親に無免許運転手をさせられ、蹴とばされ、ひとに騙されてきた可哀そうな役を見事に体現できている。
4 筋
原作を読んでいないので何とも言えないが、脚本で原作をカバーあるいは超える良さを加味しているのではなかろうか。
春樹の作品はどうもついていけない言い回し、癖があるがそれは感じなかった。
女子ドライバーを不幸な境遇に書きすぎているきらいがあるが、やむを得ないかなという気もする。
それより最終シーンで彼女がマスクをして韓国のスーパーで幸せそうに買い物をしているシーンがわからない。製作における韓国資本への御礼?
ともかく後味はよい。私にとって今年の良い文化収穫祭となった。