これでいいのかと、少々不安ながらの、お茶の水行きであったが、帰ってからとても良い本に巡り合った。
著者は元柏書房の社長さんで、地図学会の評議員や東京経済大の客員教授を務めている。書名からは元社長さんの趣味的なものに感じてしまうが、中身は専門的研究書と言えるしっかりしたものだ。
初版は2013年。それが2020年新版となったものだが「増補 坂の5種類と道について」その中でとくに「本郷通りのゆくえ」「本郷通りの謎」は古代道を考えるうえでも参考になること極めて大きい。
また、添付古地図などは他に例を見ない鮮明かつ必要サイズに拡大されたものであり読みやすい。この分野の基本書ともいえる貝塚爽平氏「東京の自然史」の資料・写真がモノクロでわかりにくいのと対照的だ。ポイントは以下に。
・本郷通りは、両側から開析する谷を避け、台地の中央をたどる典型的な尾根道
・本郷とは湯島本郷のことで、本郷も湯島も江戸以前にさかのぼる古い地名
・鎌倉時代の奥大道の一部ともいわれる歴史的にも重要なルート
・しかし、この尾根道は江戸時代初期に江戸城防衛ラインである外堀(神田川)によっ
て分断された結果、ルートを大きく捻じ曲げられ、神田明神と湯島聖堂の間を抜け、
神田川に存したすじかい橋を渡り、見附から江戸城外郭内に入るかたちに変えられて
しまった。
逆に言えば外堀(神田川)以前このミチは本郷台地中央を,東南にカーブせず江戸城
に向かっていた。
前回(武蔵⓱)で外堀通りにぶつかっているが、神田川が通る前ならそのまままっすぐに進んだと考えられる。下の図で青〇が私が歩いたルート。芳賀さんは高台の本郷給水所あたりを通りながら南下することになろう(赤丸)。