
読売の書評で目にした本。
実際に目を通してみたがかなり良かった。
わかりやすく、読みやすく、他書にない優れた内容を持つ良書だ。
著者は久保純子という方。
原発メルトダウンの時だったか、理屈をつけては国外に転出した元NHKのフリー女子アナとは異なる人。
名著「東京の自然史」著者故貝塚爽平(都立大名誉教授)の弟子で(早大教授)、タイトル名もそれにちなむそうだ。
・カラー図版、それもこれまで目にしたことがないような新たなものが多く理解への有力な手立てとなっている。
・巷にあふれる東京の坂道探訪といった文系に傾くものではなく、理系的裏付けの内容も濃い文理融合的な本となっている。
・はじめに地形学とはどんなものかについての説明がある。
「地形学とは地球表面の形態の性質や形成過程-成因などに関する科学であり、地形が読めることは地理学、地質学、資源探査・保全、土地利用計画・建設・防災・自然保護、旅行や登山、社会科・理科教育などに必要なこと」と貝塚博士の言葉を紹介している。
私自身、地形に興味を持ったきっかけはルートが全く分からない古代の道、街道を考えるとき地形が有力な手掛かりとなると知ったからである。
上の定義からすると「旅行、社会科教育」関連ということになろう。古代東海道ルート、更級日記のルートを考える手立てとなることからすると広く「歴史学、文学」を考えるにも必要なことといえよう。
・本書は「台地」「低地」に重きを置き、ページを割いていることが私にとっては極めて好印象。
「ここにいてはだめ」の江戸川区の発言は東京低地を踏まえてのことであるが、これほど東京低地のことがはっきりする本を他に知らない。

台地についてはそれ以上に詳しく有用だ。東京南部は大きいくくりで東から下総台地、東京低地、武蔵野台地の三部構成となっているが日暮里から西進するとして結構台地には入江も入り組んでいてわかりにくいので助かる気がする。
私は更級日記のルートについて、下総台地西側(市川市真間・国府台)から東京低地の微高地に入り
(江戸川区小岩)、日暮里駅西側(武蔵野台地東端)に進み台地南端を京に向かって歩いたと考えるが、本書(43p)には上野台、本郷台、麹町台、麻布台、高輪台、目黒台と図示されており理解の助けになる。
・東京低地というと文化・歴史とは無関係の不毛の低湿地であるかに思われるが、「低地の微地形と歴史時代の変化」は案外そうではなかったことを教えてくれている。
何しろ正倉院には721年の当地の戸籍が残されているのだ。
下総国葛飾郡大嶋郷戸籍だ。 島俣里、 甲和里、中村里という三つのムラ(里)名が記されている。
島俣里はあの柴又帝釈天あたり、甲和里はJR小岩駅の小岩に相当する。
あまりに低地という言葉に幻惑されすぎてはいけないということも教えてくれている。遅くても古墳時代にはかなりの人的結集があったということになる。
東京低地の遺跡と地形(94p)、95Pの図はとても有益。

・終わりの方に「博物館を訪ねる」という章があって
東京には150以上の博物館があるが、第4紀の地層や地形を含む自然史博物館がないことを憂えている。群馬、千葉、茨城、埼玉、神奈川県にはあるのに、と。
東京都は何でも優れていると錯覚している人が多いけど、コンクリートだらけの上野動物園をはじめ遅れている施設も少なくないです。
・あとがきで本書の刊行にお世話になったと芳賀啓(はがひらく)氏へ感謝を述べているが、偶然にも私も一ツ橋の千代田遺跡について氏を紹介している。









































